わたしは乱歩の初期短編が無性に好きだ!
江戸川乱歩。
云わずと知れた大家である。
この、乱歩の初期短編が傑作揃い!
乱歩は同性愛研究でも知られる。
その点からも、わたしは心惹かれてしまう!
わたしの中の腐った部分
と
わたしの中の同性愛者的な部分
が、
キュイキュイ反応するのだ!
乱歩は少年時代、かなりの美少年だったらしい。
そのころにふたつの同性愛体験を有している。
同級生からラブレターを貰って交際したもの
と
「年配も背格好も僕くらいで、やっぱり相当な美少年」とのプラトニックなもの
である。
特に後者は、乱歩がのちに、
「実にプラトニックで、熱烈で、僕の一生の恋が、その同性に対してみんな使いつくされてしまったかの観がある」
と語っているくらい、印象深いものだった。
「ちょっと二人の身体がふれ合ってもゾクッと神経にこたえる。手を握り合ったりすれば、熱がして身体が震え出す始末」
わたしはここでも乱歩に共感する。
わたしも
「実にプラトニックで、熱烈で、僕の一生の恋が、その同性に対してみんな使いつくされてしまったかの観がある」
と同じような同性愛体験を有しているのだ。
彼女とわたしは予備校で知り合った。
凄く大人しい彼女はいつも俯いていたけれど、わたしだけは気づいていた。
彼女は大変な美少女だった。
わたしは懸命に彼女に話しかけた。
僅かしか、反応がなくても。
そのうち、彼女も心を開いて呉れるようになった。
だけど、そのうちに、彼女は不安定になって行って、予備校に来なくなってしまった。
あとで聞いたところによれば
このころからわたしへの想いを自覚し、ひと知れず、悩んでいたそうだ。
わたしはそのまま、筑波大学に行き、彼女とは離れ離れになってしまった。
そうして、帰省したおりに彼女と逢ったら、別れ際、彼女は号泣した。
そのころになっては、さすがに鈍いわたしでも彼女のわたしへの想いには気づいてきた。
そして、見ていられなかった。
わたしは彼女を受け容れた。
だけど、わたしは自分の好きについて、懐疑的だった。わたしはたしかに彼女を好きだ。けれど、彼女に恋をしていると云いきれるのか。
彼女は
「わたしはカゲリちゃんを抱くことも躊躇(ためら)わないよ。」
と云っていたけれど、
わたしはこわかった。
自意識の軛(くびき)が強すぎて、他者に自分を晒すことには抵抗があった。
一年ほど経ったころだろうか、わたしはサークルの先輩から告白された。
同時に迷い出した。
「好きなひとはいる?」と訊かれて。
ひとつには自分はヘテロだと思いたかったのだ。
しかし、彼女はわたしの迷いを赦さなかった。
わたしは彼女を喪(うしな)った。
喪(うしな)ってみて、はじめて、痛感させられた。
自分の中に彼女が占める大きさ。
そして、すぐに後悔したけれど、もう遅かった。
こうやって、わたしは彼女と自分の欠けがえのない恋を喪(うしな)ったのだった。
それからも男女問わず恋びとはできたけれど、誰のことも彼女のようには想えなかった。
後年、乱歩のことばを知ったとき、わたしは深く納得したものだ。
「実にプラトニックで、熱烈で、僕の一生の恋が、その同性に対してみんな使いつくされてしまったかの観がある」
わたしも彼女に一生の恋を使ってしまったのだ。
2018.07.28